公務員は副業を禁止されています。
でも実は、全面的に禁止されているわけではないんです!
ですので、法律が禁止している範囲と基準、そして例外を知れば、実は公務員でも副業できます。
ただ残念なことに、根拠法令に基づいて、具体的に何がNGで何がセーフなのかを理解している方は、あまり多くありません。
仕事でも法律に接することが多い公務員なので、いくら副業に興味があっても、仕事以外で法律を読みたくはないですよね。
そんなあなたのために、この記事では、簡単に次の3つの知識を手に入れられるよう、分かりやすくまとめました。
公務員が禁止されている副業の範囲、基準、例外に関する知識
公務員の副業解禁に関する最新事情
公務員でもできる副業の種類とやり方
「副業には関心があるけれど、自分で法律を研究する時間がもったいない」という公務員の方は、時間の節約ができますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
Contents
公務員の副業禁止の範囲はどこまで?
最初に書いたとおり、公務員の副業は、全面的に禁止されているわけではありません。
申請をして、許可が下りれば、堂々と副業することができます。
また、後で詳しく書きますが、正攻法で許可をとって副業する以外にも、公務員が副収入を得る方法もあります。
では、具体的に、公務員の副業で制限されている対象と範囲はどこまでなのでしょうか。
国家公務員と地方公務員、それぞれ副業を制限している法律があります。
これらの根拠法令の内容をまとめると、公務員の副業で禁止対象になっているのは、次の3つのパターンになります。
- 営利企業の役員
- 自営
- 報酬を得て行なう事業・事務
それぞれ、解説していきます。
パターン1:営利企業の役員
公務員は、営利を目的とした民間企業の役員に、許可なくなれません。
「営利を目的としない民間企業」とは、特定非営利活動法人(NPO法人)などのように、法令で「営利を目的としない」ことが明示されている団体などのことです。
ちなみに、「役員」とは、下のような役職を指します。
取締役
執行役
会計参与
監査役
業務を執行する社員
理事
監事
支配人
発起人
清算人
パターン2:自営
公務員は、許可なく、自身で営利企業を営む(=自営)ことを、禁止されています。
ゲースバイケースなので、実際に、申請をしてみないと、許可されるかは分かりません。
ただ、自営副業をしている公務員は、実は結構います。
年度 | H26 | H27 | H28 | H29 |
件数 | 272 | 461 | 273 | 266 |
※人事院 年次報告書
上の表は、自営兼業を承認された件数です。
兼業の主な内容は、マンション・アパートの経営、駐車場・土地の賃貸、太陽光電気の販売などです。
理由としては、許可がおりる基準が明確になっていることと、許可がおりる副業のハードルがそこまで高くないことが、考えられます。
また、「自営」には当たらないと、明示されている副業もあります。
一定規模以下の、
不動産等賃貸
太陽光電気の販売
農業、酪農など
パターン3:報酬を得て行なう事業・事務
「営利企業の役員」と「自営」での副業以外にも、報酬を得て行うあらゆる事業や事務を、許可なく行うことはできません。
ちなみに、ここでいう「報酬」とは、下のような意味です。
『報酬』
労務、仕事の完成、事務処理の対価として支払われる金銭
※「国家公務員の兼業について(概要)」H31.3 内閣官房内閣人事局
具体的にはこんな副業が制限されているイメージかなと思います。
『労務』=アルバイトなど、労働契約等を結んで行なう仕事
『仕事の完成』=イラスト作成、HP作成など、何かしらの仕事の完成を請け負うもの
『事務処理』=クラウドーソーシングなどで請け負う事務仕事
また、『単発的な講演』や『雑誌などへの執筆』で報酬を得ることは、定期的又は継続的に従事することには当たらないため、副業にはなりません。
そもそもなぜ公務員の副業は禁止されているの?
公務員の副業について、制限されている対象と範囲は、上の3つのパターンに集約されます。
では、そもそもなぜ公務員の副業が、これほど厳しく制限されているのか、その理由はご存知ですか?
公務員の副業が制限されている理由を理解しておくと、許可が下りる基準や例外についてもより理解しやすくなりますよ。
「国家公務員の兼業について(概要)※H31.3内閣官房内閣人事局」では、公務員の副業を制限している理由として、次の3つの理由を挙げています。
- 職務の公正な執行の確保
- 公務の信用の確保
- 職務専念義務の確保
理由1:職務の公正な執行の確保
『職務の公正な執行』とは、「特定の個人や団体などの利益ではなく、国民や住民全体の利益につながるよう、仕事をしなければいけないよ」ということです。
公務員は、自覚あるなしに関わらず、強い権力を持っています。
例えば、大規模な公共事業などでは、数億~数千億規模のお金を、公務員が動かすわけですよね。
当然、そのお金と権力には多くの企業が集まり、談合事件などの不正も起きます。
このような不正を防ぐため、公共事業に関わらず、公務員は業務上の利害関係者との癒着に、細心の注意を払わなければなりません。
仮に、公務員が業務に関わりのある、営利企業の役員になったり、自営兼業をしたりして、業務外で特定の企業と深いつながりができてしまった場合、その企業に仕事を優先的に発注したり、補助金を出したりといった便宜を図ることもできてしまいます。
しかしそれでは、全体の奉仕者である公務員として、公平公正な判断がされているとは言えませんよね。
理由2:公務の信用の確保
公務員の仕事は、国民や住民との信頼関係の上で成り立っています。
税金を扱って、国民や住民がより豊かになるために仕事をするのが公務員ですし、給料も税金から払われているわけですからね。
万が一、1人の公務員が不祥事を起こした場合、それは公務員全体の信頼を損ねることにつながります。
そのため、公務員全体に対する信頼を失うような行為は、法律で禁止されているんです。
仮にある公務員が不祥事を起こしたとして、多くの人はその当事者の問題であり、役所や公務員全体の問題とはとらえません。
ただ、過剰に反応する人も一定数おり、そのクレーム対応などで行政運営に支障をきたすことを防ぎたいというのが、本音だと思います。
理由3:職務専念義務の確保
勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府(or当該地方公共団体)がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
※国家公務員法(地方公務員法)
公務員って、こんなふうに仕事しなさいと法律で決められています。
「職務専念義務」と言うと、表現はかなり硬いですが、要は公務員としての仕事にちゃんと集中しろということですね。
副業申請が許可される基準は?
ここまでで、公務員の副業禁止について、2つのことを理解していただけたんじゃないかと思います。
1つは、「公務員の副業は、制限されている対象と範囲が決められており、全面的な副業禁止ではない」こと。
もう1つは、「公務員の副業は、申請して許可が下りれば堂々と行える」ことです。
副業の許可が下りるためには、次の2つの基準をどちらも満たす必要があります。
副業先の団体や、副業する事業又は事務との間に特別の利害関係がないこと(もしくは、その発生のおそれがない)
職務の遂行に支障がないと認められること
逆に、「こんな場合は許可されない」という基準も明示されているので、そこを理解するとイメージしやすくなると思います。
副業によって、公務員としての勤務時間が割かれる恐れがある
副業によって、心身の疲労が溜まり、本業に支障を来す恐れがある
副業先と職員との間に、『免許、認可、許可、検査、税の賦課、補助金の交付、工事の請負、物品の購入等の特殊な関係』(特別の利害関係)がある
副業する事業の経営責任者になる
副業すること自体が、公務員全体の不名誉になる恐れがある
※「職員の兼業の許可について」(昭和41年2月11日付け総人局第97号)参考
最終的に許可が下りるかどうかは、上司の判断次第になるわけですが、上の条件を全て満たしていれば、申請する際に説明しやすいですし、許可も下りやすくなりますよね。
非営利団体での副業許可基準が明確に! 【2019年3月解禁情報】New
最近、「公務員も副業が解禁!」とニュースになることが度々ありますが、実は上で紹介した副業の許可基準などは、昭和の時代からあるんですよね。
じゃあ、近年なにがニュースになっているのかいうと、国家公務員・地方公務員ともに、非営利団体に限定して、副業を許可する基準が、より明確化されてきているのです!
ちなみに、非営利団体とは営利企業以外の団体を指しますが、例としてはこんな団体です。
『非営利団体』
国、地方公共団体、独立行政法人、公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人、一般社団・財団法人、自治会・町内会、マンション管理組合、同窓会など
平成31年3月に内閣官房内閣人事局から出された「国家公務員の兼業について(概要)」の中では、国家公務員が、これらの非営利団体で兼業する際の条件として、次の3つを示しています。
条件1:兼業先の非営利団体と兼業する事業・事務に関するもの
在職する期間と兼業先の間に利害関係がない
兼業先の団体の目的、兼業する事業・事務が公務の信用を傷つけるおそれがない
非営利団体として活動実績がある
非営利団体やその役員が刑事事件で起訴されていたり、業務停止命令等の不易処分を受けていない(過去2年間)
経営上の責任者(※)ではない
※理事長、理事、監事、評議員等、組織・団体の経営又は運営上の意思決定権を持っている者
条件2:兼業報酬額
社会通念上相当と認められる程度を超えない額
条件3:兼業に従事する時間
公務員としての勤務時間と重複しない
原則、週8時間以下、1か月30時間以下、平日(勤務日)3時間以下
また、地方公務員についても、神戸市や奈良市などを初めとして、公益的な活動での公務員の副業を認める動きが出ています。
これについては、別の記事で詳しく書いていますので、よければお読みください。
人口減少と少子高齢化により、生産年齢人口がどんどん減っている今、数百万人の公務員のパワーを民間て活用する動きは、まだまだ加速すると思われます。
こっそり副業しているのがばれると懲戒処分される
ここまでは、副業申請が許可される基準について解説してきました。
でも、「そもそも申請なんてしなくても、バレなければこっそり副業していいんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思います。
モラルの問題は置いておくとして、たしかに職場にばれなければ、副業しても処分されることはありません。
ただ、万が一バレた場合、申請せずにこっそり副業をしていると、ほぼ間違いなく懲戒処分されます。
処分の程度は様々ですが、申請したら許可されない副業をしていた場合と、申請すれば許可される副業をしていた場合とで、処分の重さはかなり変わってくるようです。
こっそり副業しているのがバレて懲戒処分された事例については、別の記事で詳しく解説していますので、興味があればそちらもお読みください。
どうすればバレないかを知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。
【保存版】公務員がこっそり副業しても職場にバレない方法を公開!
公務員が合法的にできる副業の方法は4つ
公務員が副業申請して許可が下りる基準をご紹介しました。
もちろん、申請して許可をもらった上で副業するのが、正攻法での公務員副業のやり方です。
ですが、副業の目的を副収入を得ることとした場合、実はそれ以外にもやり方はあるんです!
正攻法で許可をとって副業する
まずは、「正攻法で許可をとって行なう副業」についてです。
この記事の冒頭から解説してきましたが、決められた基準を満たせば、副業の許可は下ります。
ただ、上司の考え方や人事担当の考え方に左右される場合があるため、絶対ではありません。
公務員の世界なので、許可が下りやすいのは、やはり前例があるものです。
非営利団体兼業以外だと、多いのは次の4つです。
マンション・アパートの経営
駐車場・土地の賃貸
太陽光電気の販売
農業
この4つは、人事院規則で許可が下りる基準が、わりと明確になっているので、申請しやすく許可も下りやすいです。
自営にならない規模で副業する
2つ目の方法は、「自営にならない規模で副業する」です。
公務員は、自営副業が制限されています。
ですが実は、「ここまでの規模だったら自営にならないよ」と明示されている副業があるんです。
それが次の3つです。
不動産・駐車場賃貸
太陽光電気販売
小規模農業
不動産賃貸で自営にならない規模です。
- 独立家屋の賃貸で、独立家屋の数が4棟以下である
- 独立家屋以外の建物の賃貸で、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が9室以下である
- 土地の賃貸については、賃貸契約の件数が9件以下である
- 賃貸する不動産に劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備が設けられていない
- 賃貸に係る建物が旅館、ホテル等特定の業務用ではない
- 不動産賃貸料収入が年額500万円未満である
駐車場賃貸で自営にならない規模はこちら。
- 青空駐車場で、機械設備を設けていない
- 駐車台数が9台以下である
- 駐車場賃貸料収入が年額500万円未満である
太陽光電気販売で、自営にならない規模はこれ。
- 販売に係る太陽光発電設備の定格出力が10キロワット未満
最後に、農業で自営にならない規模はこれです。
- 営利を目的としていない小規模農業
根拠は、「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」です。
資産運用はそもそも副業じゃない!
公務員は副業禁止されていると聞くと、株式投資などもだめなんじゃないかと思われる方も多いのですが、それは誤解です!
株式投資、FX、投資信託、仮想通貨といった資産運用は、そもそも「業」ではありませんので、副業禁止の対象外となります。
ただ、成功するかどうかは、別問題。
投資を行なう場合、損する可能性も大いにありますので、しっかりと勉強した上でチャレンジしてみてください。
また、勤務時間中に行なうのはもってのほかですし、一定以上の収入を得た場合、確定申告する必要性も出てきますので、あわせてご注意ください。
家族経営方式
あなた自身の副業ではありませんが、家族と協力して世帯収入アップを目指すやり方もあります。
どういうことかざっくり言うと、ブログなどのネットビジネスを家族主体に行い、あなたはそのサポートをするやり方です。
これについては、別の記事で詳しく解説していますので、ぜひお読みください。
やっぱり基本が大事
副業に興味がある公務員は少なくないですが、この記事で解説した基本を理解している方は意外と多くありません。
勝手な判断で副業してばれて処分されたくはないですよね。
この記事で書いていることを理解しておけば、公務員であっても堂々と副業できる方法が、自然に見えてくると思います。
公務員の皆さんが副業する上で、参考になれば幸いです。